女性整形外科医からのメッセージ

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神谷阿久里平成24年卒

こんにちは。平成24年卒の神谷阿久里です。
私が整形外科に決めた理由は、中学の頃からの夢です。
小学生3年生で始めたバスケットボールの魅力に取り憑かれ、中学生くらいからは強い体を作ることやケアすること(コンディショニング)、スポーツ障害・外傷や、怪我の予防に興味がありました。中学3年の夏以降、いくつかの高校からバスケでのスポーツ推薦をいただき、将来について考えました。バスケでも上に行きたい。でもスポーツドクターにもなりたい。推薦をくれた監督に、医師になりたいことを伝え、バスケも強くて、医学部を狙える理系の特進クラスのある高校を紹介してほしいと頼みましたが、残念ながら条件にあう高校は見つかりませんでした。そこで、目標を医師に定め、高校は部活もできる進学校に行き、京都府内に関連病院がダントツに多い京都府立医大に入学しました。 このように最初から、スポーツ整形外科医になりたいと思った結果、医者になることを決めていた当時の私は、ただ「やりたい!」という気持ちで整形外科に入局することを決めていました。あの頃迷いや不安は微塵もなかったと記憶しています。

現在、普段は一般外傷から膝関節鏡手術を中心にスポーツ障害・外傷の治療(手術・外来)をしています。そのほかに、日本サッカー協会(JFA)の帯同ドクターとして、年に数回女子フットサル日本代表や女子サッカーの育成年代の代表チームの遠征や大会に参加し、実際の現場でチームとともに活動する仕事をさせていただいています。ともにとてもやりがいがあります。

整形外科の医局に女性が少ない、というのは事実であり、私の学年でも、9人中女性は1人です。その理由には、整形外科は男性の科であるという既成のイメージがあるのかもしれません。しかし、整形外科に入局して8年になりますが、実際に整形外科に入ってから、女性であることで困り果てたという経験は今のところありません。多少肉体労働的な要素はあり、手術の日の仕事おわりは疲労困憊な爽快感にひたることはあります。笑 また、女性は男性に比較して、パワー面では平均的に劣っていますよね。私も体力には自信がある方ですが、実際、「これ、ほんまに片手で操作できるん?」というような重厚な手術機械もありますし、「これ、ほんまに切れる?」というような丈夫な骨をもつ患者さんもいます。しかし、心配不要です。医療はほとんどの場合チームで行います。全員が全員、男であろうと女であろうと、若手であろうとベテランであろうと、全て一人でなんでもできるわけではありません。全員がオールラウンダーでもありません。人間なのですからそれぞれに得意なことや不得意なことがあります。例えばあなたが、腕力がないことで困ることがあるとすれば、助けて貰うこともできます。そして実は、力がいりそうに見える骨折・脱臼整復なども、コツがわかり、技術があればそれほど力が必要ないこともあります。

どんな職種においてもいえることだと思いますし、また人によっても異なりますが、女性のライフステージの変化は男性よりも激しく、結婚や出産の適齢期で仕事を減らしたり、やめたりしてしまう人も少なくないという現実があります。しかしさまざまなライフステージを乗り越え、第一線で活躍し続ける女性も多く、女性の社会進出も進みつつある今に生きる私たちは、努力次第でどちらも選択できる立場にいます。
キャリアもプライベートも、充実させていきたい。欲張りですがどちらも諦めたくない。何をどのタイミングでどのように頑張ればいいのか。色々な葛藤が出てくることになります。しかし、そうなる前の今から考えるのはただの想像に過ぎません。生涯やっていきたいと思える専門科を選び、目の前のできることはしっかりやっておき、実際にはそのステージになってから対応できるようにすればいいのです。

整形外科に入りたい・整形外科をやってみたいという気持ちはあるけれど、見学にいくと男性ばかりで、実際に働く女性のイメージが掴めなくて躊躇しているキミ!相談してくだされば、きっと力になれます。ぜひ一緒にがんばりましょう!!

浅田麻樹平成19年卒

整形外科はワークライフバランスが取りやすい科

整形外科といっても、病院によって仕事の内容は様々です。私は大学で前期専攻医を終えてから3年あまり京都第一赤十字病院に勤務し、救急や外傷、骨折治療など、エキサイティングな経験をたくさんさせて頂きました。当時子供がいたら、同じレベルでは経験できなかったかもしれません。
ワークライフバランスと言いますが、最適なバランスは人それぞれでしょう。ただ医師を志すと人で、子育てだけできれば良い、という人は少ないと思います。子供は欲しいけど仕事も疎かにしたくない!と思うなら、子供の世話をしてくれる家族の協力が不可欠です。一人で全部やる!と思っても、保育園のお迎えの時間までに仕事が片付かない場合は、誰かにお迎え〜夕飯、お風呂や寝る準備をお願いしないといけない。子供が熱を出せば保育園から呼び出しがかかり、予定を変更せざるを得ない。

私は大学勤務中に一人目が生まれて間もなく医師である夫の単身赴任が始まったので、保育園の夜間部(夕飯提供)にお世話になりつつ、執刀予定日には、万が一子供が熱を出しても手術に影響が出ないよう、(義)母にスタンバイをお願いしたりして、やりくりしました。同僚の先生方にカバーしていただくことも多々ありました。

家に帰ると、幼い子供は常に世話が必要です。睡眠を確保しようとすると家事が犠牲になり、ベビーフードや家事代行のお世話にもなりました。2人目が生まれた後、生後7か月の4月に職場復帰するまで専業主婦をしましたが、その間にも、集中して論文の執筆をするために、京都市のファミリーサポートというサービスでベビーシッターを利用したこともあります。その甲斐もあってか学位(博士号)を取得する機会にも恵まれました。

現在は2人目(1歳)がしょっちゅう熱を出して保育園から呼び出されるため、手術からは遠ざかって(厳密には整形外科ではなくリハビリテーション科に所属して)、子育てにエネルギーを費やしている現状です。お金で解決できるところは出し惜しみせず、頼る相手を分散させることで、自分や周囲の精神・健康も損なうことなく、今のところ子供もスクスクと育ってくれていると思っています。
整形外科は男性が多い科ですが、その反面、子育てとの両立がしやすいのではないかと思います。手術はクリエイティブで、良くも悪くも結果がわかりやすく出るので、腕の磨きがいがあります。手術がしたいけど子供も欲しいという女性には、整形外科がイチオシですよ!

岸田愛子平成18年卒

こんにちは。平成18年度 福井大学医学部卒の岸田愛子です。現在は十条武田リハビリテーション病院に勤務し、勝見先生と河野先生の下で上肢の外科を専門に働かせていただいています。ありがたいことに他院からの御紹介も多く、手術症例も沢山受け持たせていただいています。またこの春から小学校1年生になった娘の母でもあります。

上肢の外科は非常に繊細な領域であり術式も沢山あります。手術もルーペをつけて行います。特に手は解剖も複雑であり、全く正常に戻すのは不可能でもそのメカニズムを理解し、「使える手」というものにしなければなりません。そのためには作業療法士達とのコミュニケーションも大切であり、カンファレンスのみならず普段から密に連絡を取り合い、患者さんのADL改善に努めています。上肢の外科は確かに解剖が複雑ですが、しっかり勉強しいったんその魅力にどっぷりはまると非常に面白い領域だということがわかります。私も上肢の外科に魅了された1人です。本当に面白いし仕事として毎日充実感があります。実は、私がそもそも整形外科医になるきっかけとなったのは高橋教授との出会いでした。この場を借りてこんな素晴らしい仕事をできるチャンスを与えて下さった高橋教授に心から御礼申し上げます。

この様にどっぷりと上肢の外科につかっているわけですが、一旦病院を出ると母に戻ります。毎朝娘のためにお弁当を作り、帰宅後は娘の宿題チェックと翌日の授業の準備を一緒にするなど第2ラウンドが待っており、可愛い娘のために日々全力投球しています。

しかし、自分なりに毎日仕事と育児を頑張ってはいますが中途半端な自分に自己嫌悪になることも多々あります。そんな私が今まで心折れずにやってこられたのは、職場や家族など周りの理解と助けがあったからです。妊娠が発覚してから今まで、勤務先の上司達は常に理解を示し気遣いながらも、私を1人の医師として信頼し私の持てる力を十分に発揮できる環境を与えて下さいました。毎日心から感謝しています。

一寸先は闇で思い通りにも行かないし壁にぶつかってばかりですが、七転び八起きの精神が大切です。夢いっぱいの女医さん達、一緒に頑張っていきましょう!

谷口有希子平成13年卒

はじめまして。私は2児を育てながら市中病院で勤務しています。
医師や研究者として長く仕事をしていこうと考えた時に、進路を選択する上で大事なことが2つあると考えています。一つめは、自分にとって魅力ある科を選ぶこと、そして2つめは、ライフステージに応じて柔軟な働き方ができる科を選ぶことではないでしょうか。

整形外科には、脊椎外科、股・膝・肩といった関節外科、手や足の外科、リウマチやスポーツ、小児、リハビリテーションといったサブスペシャリティがあり、整形外科医として基本的なことを学んでいく中で自分にあったものを選択することも可能です。また、ライフステージに応じてサブスペシャリティを選んだり、働き方を変えたりすることも可能です。

現在の私が仕事を続けられているのは、なにより職場の上司や仲間の暖かい理解や助けをいただいているからであり、常々感謝しています。また勤務先には病児保育室や育児短時間勤務などの支援制度も整っており、大変助かっています。

医局員や関連施設を多くもつ京都府立医科大学整形外科学教室は、様々な配慮をしてくださる教室だと思っています。興味をもっておられる方、一緒に楽しく働きましょう。お待ちしています。