専門クリニックのご案内

足・足関節クリニック

はじめに

足の外科クリニックでは足首より下を担当し、外反母趾、変形性足関節症、外反扁平足などの慢性の病気や、捻挫による靱帯損傷や骨折などのけがを含めて、年間100例以上の手術を行っています。

日常生活様式の変化から、足に何らかのトラブルがある方が増えています。足には体重を支えるという大事な役目があります。「力強く安定しており、その上で負担が一ヵ所に集中しないしなやかな足にすること」がわれわれの仕事です。

代表的疾患

変形性足関節症

変形性関節症は、軟骨がすり減って、関節が変形した状態です。足関節の変形性関節症は、膝関節や股関節と比べてまれです。はっきりとした原因がないものは、東アジア、特に日本で多く、正座などの生活様式と関係があるとされています。けがなど、原因がはっきりしている変形性関節症では、欧米では骨折が原因のことが多いですが、日本では捻挫の後遺症として多く見られます。

初期の段階では関節を温存する骨切り術をおこないますが、進行して軟骨の摩耗が強い場合には、関節固定術もしくは人工関節をおこないます。関節固定術では関節鏡を用いて処置を行うため、傷が小さく術後の痛みも軽度です。また足関節を固定しても、足の他の関節(距踵関節、中足部の関節)が動きを補ってくれるため、日常生活が障害されず、非常に高い満足度が得られています。

下位脛骨骨切り術

 
術前/術後

関節固定術

 
術前/術後

外反母趾

靴などの生活様式の変化から、外反母趾による疼痛を訴える患者さんは増えています。母趾の変形に注目しがちですが、進行すると足底に胼胝(たこ)ができ、この痛みが中心となります。

外反母趾の手術後には胼胝(たこ)も徐々に消失し、外見もよく痛みのない歩行ができるようになります。

 
外反変形のみでなく、胼胝も経時的に改善している

成人外反扁平足(後脛骨筋腱機能不全症:PTTD)

つちふまずが低下した状態を扁平足といいます。成人では加齢によって筋肉・腱・靱帯の機能が弱くなり、体重が増えた時にささえきれなくなって扁平足が出現することがあります。とくに後脛骨筋腱という、つちふまずをささえる腱の変性や断裂が重要と考えられており、後脛骨筋腱機能不全症(PTTD)といいます。足関節の内くるぶし周囲に疼痛と腫脹が出現し、つま先立ちが困難となります。つちふまずはつぶれて扁平足となり、末期には足首にも変形がみられます。

われわれは変形の進行に応じて治療法を選択しています。関節を温存できる場合には、靱帯・腱の再建と骨切り術を併用して治療を行います。高度な変形の場合には関節固定術が必要となります。

PTTDの臨床症状

 

PTTDの術前後X線

 
手術前/手術後(アーチの改善を認める)

関節リウマチの足部変形

関節リウマチによる足部の変形は非常に多く、扁平三角状変形や外反扁平足などがみられます。

母趾だけでなく他の趾も変形するため、すべての足趾の状態を把握して治療を行います。近年は薬物によるコントロールが良好な症例もあり、関節温存が可能な症例には積極的に関節温存手術を施行しています。

足関節後方インピンジメント症候群・三角骨障害

バレリーナに多く、足関節後方の三角骨や距骨後方突起が底屈時にはさまることで痛みが生じる疾患です。手術治療が必要な場合には関節鏡を用いた手術を行っています。傷も小さく、術後の痛みも少ないためスポーツへの早期復帰が可能です。

足関節捻挫・外側靱帯損傷

スポーツで最も多いけがは足関節捻挫です。受傷後すぐは保存療法を選択しますが、不安定性が残る場合があります。このような方では、中年から壮年期に前述の変形性足関節症へ進行する可能性があるので、靱帯機能を再建する必要があります。まず関節鏡を用いて靱帯の状態を観察し、靱帯が残っていれば靱帯修復術を行います。靱帯が残っていない場合や不安定性が強い場合は他の靱帯や腱を用いた再建術を行います。

リハビリテーションも重要であり、退院後はアスレチックリハビリテーションが可能な関連施設でリハビリテーションを施行しています。日常生活や競技に安心して復帰できるような体制を整えています。

足底腱膜炎・アキレス腱症(アキレス腱周囲炎)

ESWT

足部の形態や使いすぎが原因で発症する、腱および付着部炎として足底腱膜炎とアキレス腱症があります。どちらも保存療法が主体であり、足部形態を把握して足底板を用いた治療を行いますが、難治性の場合には体外衝撃波治療(ESWT)を施行しております。

その他の疾患

距骨骨軟骨損傷、Charcot-Marie-Tooth 病の凹足変形、足根管症候群やモートン病などの絞扼性神経障害、麻痺足の変形など幅広い症例に対して保存療法と手術療法を施行しています。