骨粗鬆症性骨折の中でもとくに健康寿命への影響が大きい大腿骨近位部骨折は、関節内骨折である大腿骨頚部骨折(頚部骨折)と、関節外骨折である大腿骨転子部骨折(転子部骨折)の2つの骨折型に大別される。疫学的には区別されずに検討されることも多いが、われわれの京都府における調査で、同じ年齢群でも地域により両者の発生の割合が異なることが示されている1),2)。また、一般に加齢に伴う発生数の増加は、頚部骨折に比べて転子部骨折で著しいことも知られている。これらのことから、発生要因が骨折型ごとに異なる可能性が考えられる。
発生要因のうち外傷の要素については、ほとんどが立った高さからの転倒で発生していること1),2)や、転倒による発生数の季節変動がそのまま全体の発生数の季節変動として表れている点2)など両者に共通している。従って、両者の発生割合の地域差は受傷機転の違いからは説明できない。
一方、骨粗鬆症における骨脆弱性には、骨密度以外にも多くの要因の関係が指摘されており、骨脆弱性の要素の違いが骨折型に影響していることも考えられる。骨折型による発生割合の地域差は、おもに頚部骨折が大都市部で多く地方では少ないことによることが示唆されている1)。地方と大都市部の現在あるいは過去の生活習慣の違いが、とくに頚部骨折の発生しやすさに影響している可能性があり、予防対策を考える上で有用と考えられる。