京都府立医科大学統合生理学教室において、八木田和弘教授の指導の下、教室の大学院生が運動器の体内時計の研究をしています(図1)。
ヒトを含めた哺乳類では、睡眠、体温やホルモン分泌など、さまざまな生理現象に約24時間周期のリズム(概日リズム)があります。これを生み出している体内のメカニズムが「体内時計」です。体内時計は、地球の24時間周期の自転運動によって生じる昼夜サイクルに順応できるよう、生物が獲得してきたと考えられています。分子レベルでは、Per1/2、Cry1/2、Bmal1、Clockなどの時計遺伝子と呼ばれる遺伝子群が転写・翻訳のフィードバックループを形成し、概日リズムを刻んでいます。不規則な生活やシフトワークによる体内時計の乱れは、さまざまな疾患や癌のリスクとなることが明らかにされています。
「寝る子は育つ」ということわざがあるように、骨の成長や骨代謝には日内変動があることが知られています。私たちは、時計遺伝子の遺伝子改変動物であるPer2::Lucマウスを用いた研究で骨・軟骨に体内時計が存在することを明らかにしました(図2)。現在、シフトワークなどの体内時計の乱れと運動器疾患との関連を、モデル動物を用いて研究し、疾患予防や運動器の健康維持に向けての最適な治療法の確立に向けて研究しています。
大腿骨の成長軟骨および関節軟骨で、時計遺伝子の強い発光と約24時間周期の明瞭なリズムが存在することを明らかにした(京都府立医科大学統合生理学 八木田和弘教授提供)