骨肉腫細胞の増殖・浸潤・転移の研究
他の癌細胞に発現し、癌細胞の増殖、浸潤、転移に関与していると言われている細胞膜タンパク質が骨肉腫細胞株の細胞膜に発現していることが判明し、それを遺伝子レベルで操作することで骨肉腫細胞の病態解析を行っています。
より良い治療法と患肢温存の取り組みを紹介します。
”がん”は癌腫と肉腫に分類されます。整形外科の骨軟部腫瘍班では骨や軟部組織に発生する肉腫の治療を行っております。肉腫は癌腫と比較して、非常に稀であるにも関わらず、多様性もあるため、病態や治療法に一定した見解は得られていません。
代表的な疾患では、骨肉腫は学童期から青年期に発生する肉腫です。骨肉腫細胞は局所で増殖し、血管内へ浸潤して肺に転移し、増殖して患者を死に至らせます。治療法としては化学療法や手術療法がありますが、2つの未解決の問題があります。
1つは骨肉腫細胞が化学療法に対する
抵抗性をもち、化学療法の十分な効果が得られないこともあります。もう1つは広範切除術が行われたさいに骨組織の大きな欠損が生じ、術後に大きな機能障害が生じることがあります。
そこでわれわれの研究班では骨肉腫を中心とした悪性骨軟部肉腫の細胞を用いて、肉腫細胞のタンパク質を分子レベルや遺伝子レベルで解析・操作し、病態解明や新規治療法の開発を行っております。また、広範囲骨欠損に対して骨再生研究も行っております。
他の癌細胞に発現し、癌細胞の増殖、浸潤、転移に関与していると言われている細胞膜タンパク質が骨肉腫細胞株の細胞膜に発現していることが判明し、それを遺伝子レベルで操作することで骨肉腫細胞の病態解析を行っています。
骨肉腫細胞が化学療法や外的刺激から細胞を守るタンパク質を発現しており、化学療法抵抗性を獲得していると考えられております。そのタンパク質を遺伝子レベルで抑制することで化学療法抵抗性を減少させ、化学療法の抗腫瘍効果を増強させる研究を行っております。
骨肉腫などの広範切除術後に生じる広範囲な骨欠損は骨の自己修復能力では不十分です。骨組織の元となる骨芽細胞は増殖能に乏しく、現在の臨床では人工物や処理骨で治療が試みられておりますが、それぞれに問題点も多く、再生医療研究に期待されております。われわれの研究室ではヒト線維芽細胞に遺伝子を導入し、骨芽細胞を直接作成する研究を行っております。また、様々な遺伝子を組み合わせることで、さらに骨芽細胞の誘導効率を改善する研究も行っております。