京都第二赤十字病院
整形外科の特色
救命センターを受診する重篤な外傷などの急性期疾患から、近隣の先生方を中心に遠方からも紹介を受ける慢性疾患まで幅広い症例の治療を行っています。
1.関節外科 股関節では人工股関節の手術進入法に前方進入法を用いることで、術後の筋力低下や脱臼の防止に努めています。膝関節では変形性関節症に対しては比較的若年で活動性の高い患者様には膝周囲の骨切り術を、比較的高齢で変形の程度が軽度の患者様には人工膝関節単顆置換術を、変形の高度な場合には人工膝関節全置換術を施行しています。人工膝単顆置換術や人工膝全置換術においては3Dシミュレーションソフトを用いて詳細な術前計画を行い、ロボット支援手術も導入し、正確な骨切りを行うよう心掛けています。
また前十字靭帯損傷に対しては解剖学的な靭帯の走行を再現する二重束再建術を施行し、スポーツ復帰の助けになるよう努めています。半月板損傷に対しては可能な限り半月板機能の温存を目指して縫合術を行っています。
2.手の外科・末梢神経外科 上肢の骨折・脱臼・靭帯損傷などの治療、肘部管症候群・手根管症候群などの末梢神経障害の加療を行っています。新たな関節鏡システムを導入し、手関節・肘関節疾患の関節鏡視下手術も行っています。
3.関節リウマチ 京都府立医科大学リウマチ診療グループの関連機関として、カンファレンスや人的交流を行い、当院リウマチ内科とも連携し、日本リウマチ学会認定施設として、生物学的製剤の使用、超音波検査やMRIといった画像診断も利用し、先進的なリウマチ診療を提供します。さらに、リハビリテーション医学、栄養学、漢方治療も併用し、ドラッグフリー寛解の達成、診断未確定な関節症状の治療、複数の疾患を抱えている患者さんへの対応を実践しています。
4.脊椎・脊髄外科 独自に開発した顕微鏡による小侵襲手術法により骨を切除する量、筋肉への侵襲、出血量を軽減しています。術後安静期間や在院日数を短縮し、基本的にカラーやコルセットによる外固定は必要ありません。
5.肩関節外科 関節鏡を用いて低侵襲に、腱板損傷・反復性肩関節脱臼の手術を行っています。
6.外傷外科 四肢・脊椎・骨盤の骨折や脱臼に対して早期手術を施行し、急性期リハビリテーションを提供しています。
7.骨粗鬆症 高齢者における転倒などの軽微な外傷による骨折の多くは骨粗鬆症が原因です。骨粗鬆症になると治癒は困難なので予防が大切です。ビスフォスホネート剤(骨吸収阻害剤)が改良され、新たなSERM剤(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)が開発されて、さらに強力な骨形成剤であるPTH(副甲状腺ホルモン)も使用できるようになりました。各症例の病態に合わせて使い分けています。
運動器の再生外科として地域の患者さんや連携する医療施設に信頼される医療をめざしています。1)関節外科 2)手の外科・末梢神経外科 3)脊椎・脊髄外科 4)関節リウマチ 5)小児整形外科 6)スポーツ整形外科 7)外傷外科など整形外科の各分野において専門性を重視した最新の高度医療を提供します。治療には日本整形外科学会の各種疾患治療ガイドラインを基本とした低侵襲手術を目標としています。骨折などの外傷手術は可能な限り緊急対応での早期手術で合併症の回避に努めています。
週間業務スケジュール表
8:00-9:00 | 午前 | 午後 | |
---|---|---|---|
月 | 外来診療 | 手術病棟診療 | |
火 | 症例検討会 | 手術病棟診療 | 手術病棟診療 |
水 | 手術病棟診療 | 手術病棟診療 | |
木 | 外来診療 | 手術病棟診療 | |
金 | 症例検討会 | 手術病棟診療 | 手術病棟診療 |
当科の主な手術内容(特色)と件数
2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | |
---|---|---|---|---|---|
新患患者数 | 2,897人s | 2,609人 | 2,208人 | 1,845人 | 2,316人 |
外来患者数(※1日平均) | 138.2人 | 134.4人 | 127.9人 | 109.6人 | 110.4人 |
新入院患者数 | 1,136人 | 1,167人 | 1,221人 | 1,165人 | 1,233人 |
手術症例(1年間) | 1,298例 | 1,362例 | 1,397例 | 1,285例 | 1,349例 |
人工股関節手術 | 121例 | 124例 | 157例 | 122例 | 162例 |
人工膝関節手術 | 112例 | 99例 | 158例 | 106例 | 120例 |
脊椎脊髄関連手術 | 144例 | 131例 | 122例 | 145例 | 135例 |
骨折手術(非観血除く) | 585例 | 551例 | 549例 | 545例 | 465例 |
整形外科 臨床研修プログラム
I)到達目標
整形外科学(Orthopaedics)は運動器疾患を取り扱い、痛みや機能障害を回復させる臨床医学を担当している。運動器は骨、関節、脊髄・脊椎、靱帯、筋、腱、末梢神経などその範囲は広く、そこから発生する疾患も多岐にわたり、患者数も極めて多い。変形性関節症、脊椎・脊髄疾患、骨粗鬆症、関節リウマチなどの慢性疾患から、骨折・脱臼あるいは外傷、スポーツ傷害などの外傷、小児整形外科、手・末梢神経の疾患、骨軟部腫瘍など小児から高齢者にいたる多数の患者さんの治療を担当する整形外科医のニーズはますます大きくなっている。整形外科臨床研修プログラムではこれらの疾患について必要な基本的知識や幅広い治療法を習得する。
II)基本方針
外科必修科目の中で1ヵ月選択(基本プログラム)、選択科目の中で1ヵ月選択(選択プログラムA)、2ヵ月選択(選択プログラムB)を選ぶことができる。研修期間に応じて基本的治療から高度の技術を要する治療および最先端の医療に関する能力を習得できる。
1)基本プログラム(1ヵ月)
運動器疾患の基本的診察能力、神経学的診察能力を習得し、四肢外傷に対するプライマリーケアを身につける。
指導医とともに運動器(骨、関節、筋)疾患の基本的な診察、検査、診断、治療法などを習得する。
脊髄、末梢神経に対する神経学的所見がとれ、正しく記載できる。
運動器の外傷(救急を含む)に対し、適切な検査を行い診断でき初期治療を正しく行える。
清潔操作の必要性を理解し検査、処置ができる。
2)選択プログラムA(1ヵ月)
運動器(四肢、体幹の骨・関節・筋・末梢神経・脊椎・脊髄)疾患・外傷に対応できる基本的診療能力を習得する。運動器疾患・外傷に対して主治医となり、実際に個々の入院患者を指導医とともに受け持つ。担当した患者の術前検査、インフォームドコンセント、手術の介助、術後管理、後療法としてのリハビリテーションを主治医として研修する。選択プログラムAでの習得すべき項目は以下のものである。
外来、救急室にて、指導医とともに診察、検査、診断、治療法などを習得する。
担当する患者の重症度を判断し、基本的な緊急判断ができる。
疾患および身体部位に応じた適切な検査を指示でき、その結果を正確に把握できるよう努める。
清潔操作の必要性を理解し、検査、処置ができる。
運動器の外傷の治療(救急を含む)に積極的に参加し、病態の評価・検査・診断・治療法を習得する。
整形外科領域においては高度の清潔度が要求されるが、そのために必要な手洗い、ガウンテクニックを習得する。
整形外科疾患の手術助手の基本を習得する。
整形外科関連の学会、研修会、セミナーに参加し、広い運動器疾患の基本的知識と最新情報を習得する。
3)選択プログラムB(2ヵ月)
1ヵ月間の研修で体験できなかった運動器疾患・外傷に対して主治医となり、実際に個々の入院患者を指導医とともに受け持つ。さらに、高度の技術を必要とする手術や最先端の医療機器を駆使した検査法、治療方法を研修する。1ヵ月選択の場合よりさらに広く四肢・脊椎の外傷(骨折、脱臼)、慢性疾患(変形性関節症、脊椎症、関節リウマチ、骨粗鬆症、骨軟部腫瘍など)、およびスポーツ外傷などについて検査、診断、初期治療を理解する。手術治療に関しては人工関節置換術などを体験することで高度な清潔度が要求される手洗い、ガウンテクニックを習得する。同時にリハビリテーション医学の基本と実践についても臨床の現場で学ぶ。選択プログラムBに加わる新しい項目は以下のものである。
変性疾患を列挙してその自然経過、病態、治療方針を理解する。
運動器の慢性疾患入院患者を受け持ち、術前術後管理を行い、その手術を経験する。
高度な清潔度が要求される人工関節置換術などに使用するクリーンルーム内で、手術ができるための手洗い、ガウンテクニックを習得する。
リハビリテーション医学の基本的な診療と実践を習得する。
スポーツ外傷の特性を理解し競技復帰までのリハビリテーションプログラムを習得する。
IV)教育体制
1) 毎週2回の症例検討会にて,入院手術症例の治療について主治医団を代表して受け持ち症例のプレゼンテーションも研修する。
2) 部長回診に参加し,担当入院患者の病状説明を行い,診断・治療方針についての方針を述べる。
3) 指導医とともに当直し,入院患者や外来救急患者の診療を行う。
4) 外来および入院患者に対し指導医とともに診療にあたる。
5) 当院の診療においては、特殊外来部門として骨・関節疾患(股、膝、足、肩など)、脊椎・脊髄疾患、リウマチ性疾患、スポーツ外傷、手・末梢神経疾患、小児整形外科疾患、骨粗鬆症などの特殊クリニックをもうけているが、その各指導医とともに診療にあたる。